【第5話】たかがPOPされどPOP ー『目』にする機会を増やすー


たかがPOPされどPOP
ー『目』にする機会を増やすー

ある日、三木が一日店にいさせてくれと言ってきたので、
何か意図があるのだろうとOKをだし、一日二人で店番をしていた。

意外だったのは、やらせてみるとレジから袋詰めまでなんでもそつなくこなす。ビックリした。

「なんか、慣れてるねえ。」
「もともと商売屋の息子ですからね。」
「なるほど、、どうりで、、、何屋なの?」
「和菓子屋ですね。弟が跡をついでいて、今はすこし大きくなりましたが、家族経営に毛が生えた程度のものです。私が子供の頃はまさに家族経営でした。
子供の頃の毎日食卓の話題は『どうやったら和菓子が売れるか?』ばかり、でもそれが今の自分を作ってくれたわけですから、文字通り『おかし』なものですよね。」
と笑いながら言った。

なるほど、、小売店の気持ちがよく解るわけだ、、

ある一人のお客様の接客が終わるといきなり三木が声をかけてきた。

「一郎さん、紙とペンを用意してください。」

「何?何?」

「今のお客様ベーグルを買われたんですが、最初、ベーグルのだけをレジに持ってこられました。」

「ああ、そうなんだ、、」

「ただ、こちらのお店はクリームチーズも売っているじゃないですか、ですので、そのことをお伝えしてみたら、『あら、そうなの?』と言って買っていってくださいました。

『ここでクリームチーズは売っていない』と思われたんですね。もしくは目に入らなかったか、やはり、冷蔵ケースの中に入っているので解りにくいんだと思います。

ですので、この紙に、『クリームチーズは冷蔵ケースの中にあります。』と書いて下さい。

書き終わったら、それをパウチして、ベーグルの横に置きましょう。」

「なるほどねえ、、」

「関心していただけるのはありがたいですが、今後、これを一郎さんにやっていただきますよ。

大手はこういうところもきっちり抑えています。

セブンイレブンなんですが、棚のポップの表面はその商品を勧める広告になっているのですが、裏面は『●●はこの裏にあります。』と書いてあります。

それ以外にもおもちゃを販売するトイザらスはレジの周りに

『買い忘れはありませんか、お買い求めの品に電池は入っていますか?』

のPOPを置いています。デニーズとかはテーブルに据え置きの小さいサイズのデザートのメニューを置いて、メインのメニューを下げた後の追加注文を促す方法をやってますよね。ガストはテーブルに直にデザートやサイドメニューのシール、吉野家もカウンターにサラダやセットメニューのシールとかを貼ってあります。

先日、『いいものを作ればいつか解ってもらえる』の時に話しましたが、お客様が思い出す瞬間の一番は『目』にした時。

大手は今お話ししたとおり、目にする機会をとにかく増やそうとしています。

ただでさえ不利な小売店が、POPという自分達も出来ることで大手以下の事をやっていたら、、、ってここから先は言わなくてもお判りいただけますよね。

『お客様にお店の中に入ってきてもらう事。』これが一番難しい。
店に入ってきてもらったら全ての『情報』を『自分達の情報』だけにできるんですよ。
こんなチャンスはありません。

せっかく一番難しいところををクリアしたのに、お客様が必要としている物を、こちらの情報伝達の不備で買わずに出て行かれたら苦労も水の泡。

本来、お店に落ちるはずだったお金は、他のお店に落ちることになります。思い出してもらって買ってもらえば自店の売り上げ、思い出させずに帰られてしまえば、近くのお店に売り上げを取られる。
もったいなくありませんか?
仮に一人500円使うとして、一日の10人なら、一日5千円、一ヶ月で15万円もの売り上げを損していることになるんですよ。

確かに三木の言うとおりだ。しかし、こんな事すらやってなかったんだなあと同時に思う。

また、ファミレスも、コンビニも使ったことがあるのに自分は何を見ていたんだろう。

ファミレスではデザートのメニューをみて、デザートを頼んだことはあるし、吉野家でもサラダを頼んだことがある。

いつの間にかお客の立場でしか物を見なくなっている。

世の中はヒントに溢れていると言うのに、、、
三木は

「一回作ってしまえば、ずっとは使えます。『一行の手間を惜しまない』ですよ。
ジャムもなにか作りたいですね。牛乳も作りましょうか」

この店はまだまだやることだらけだと改めて気づいた。

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続きを読む >> 【第6話】フェイスブックの活用法1

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